BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


藤川の指が私の胸元に置かれ、シャツのボタンを一つだけ外す。


「や、やだ……」


何をされるの……?

期待と不安と羞恥心が同時に生まれ。

ただ息を詰め、彼の顔が近づいてくるのを待つ。


鎖骨から首筋にかけて、湿ったものが這っていく。


「ぁ……」


一気に力が抜け、そばにあった藤川のシャツにしがみついた。


「……可愛い」


フッと笑う気配がし、頬全体が熱を持つ。

こんな姿を見せてしまうなんて屈辱だ。

このまま流されるわけにはいかないから、唇をかみしめ、彼を睨み上げる。


「……私。桜花で、好きな人見つける予定だから」


暗に『貴方のことは好きにはならない』と強気な言葉を放ったつもりなのに、藤川はクスリと余裕の笑みをこぼす。


「ふーん。好きな人なんて、そんな都合よく見つけられるのかな」


私のシャツのボタンを留め直し、藤川は小バカにしたように目を細める。


「どうしても桜花に行きたいと言うなら、もう一つ条件を作ろうか」

「……また条件?」

「そう。変な男が近寄らないように、ね」