BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


昔の罪悪感から、その名で呼んで欲しくないのだと、たやすく想像できる。


ふと、藤川が私を抱き寄せていた腕をほどき、私の左腕を取った。

そっとブレザーの袖をまくられ、隠されていたものがあらわになる。


「このキズ……」


手首と肘の中間辺りに残る、三日月型の傷痕。


「……あぁ、これね。確か小学生の頃、セイちゃんをかばったときにできたんだったかな」


私はあまり思い出したくない記憶を頭の隅に浮かべ、目を伏せる。


「少しは昔のこと、覚えてるんだな」

「曖昧だけどね。セイちゃんがどうしてイジメられていたのか、正直覚えてない」


思えば、この傷はあの悪ガキの『コウ』という男の子につけられたのだから。

藤川がつけた傷ということになる。


今さらそれに気づいたとき、言いようのない苦しさで胸が締めつけられた。


「俺の、せいで……」


藤川自身も苦しげに傷を見つめ、悔いるように唇をかみしめていた。