BLACK TRAP ~あの月に誓った日~


でもきっと、偶然そうなってしまったのだろうと、気には留めない。

藤川は気まぐれだし、彼女候補がたくさんいると、よく噂されているから。


彼は私の作ったコーヒー味のトリュフを一つ摘まみ、色んな方向から眺めたあと、口の中に放り込む。


「うん。甘い。……七瀬もいる?」

「──私はいい」


差し出されたトリュフを、首を横に振って遠慮した。


「そう? じゃあ全部もらうからな」


お腹が空いていたのか、藤川は残りのトリュフも次々と口の中に放り込んでいった。


大量に食べても、太らないどころかニキビすらできないんだろうな、どうせ。


私は藤川の滑らかな肌を横目で眺める。



「……ご馳走さま。美味かったよ、七瀬のチョコ」


しばらくして、よく見ると彼の頬や首の辺りがうっすらと赤く染まってきていた。


しかも私を見る目つきが何か変。

ぼんやりとしていて、熱に浮かされているみたいな感じ。

いつもの自信過剰な雰囲気が、すっかり身を潜めている。


「藤川先輩、どうかした? 顔赤いけど熱でもあるの?」

「え。赤い……?」