美愛の好きな人、小野寺理希はあの子のことを知っていて呼び捨てにすらしていた。
でも、あの子と付き合っているという佐々木海里は、小野寺理希のことを知らないと答えた。
それはつまり、誰かが誰かを守るために嘘をついているということで。
佐々木海里と小野寺理希の間には、やはり繋がりがあるのだと予測できた。
それに椿高のイルミネーションを見に行ったときに佐々木海里の隣にいたのは、さっき小野寺理希と一緒にいた派手なピアスの椎名深影だったのだから。
残念ながら、美愛の好きな人は、ごく普通の真面目なタイプではないと決定づけられる。
そんな人に近づけば、何か悪いトラブルに見舞われそうで、幼なじみとしてはかなり心配だ。
色々考え込んでいるうちに、藤川はスクールバッグから何かを取り出し、自分の膝の上に乗せる。
それは私のあげたバレンタインチョコで、彼は英字の印刷された包みを無造作に開け始めた。
今ここで、食べるつもりらしい。
結局、今日見た限りでは、私以外のチョコは受け取っていなかったな……とぼんやり思う。



