どこか哀しげにも聞こえる響き。
今日、この恋が終わるなんて思わなかった。
……恋といっても、小さな欠片程度だけれど。
ふっと溜め息をつき、何気なくベンチにもたれてから、すぐさま後悔する。
藤川の長い左の腕が背もたれの上に乗せられていて、まるで肩を抱かれているみたいな状況に置かれていることに気づいたから。
「…………」
急に体を離すのも不自然だし、意識していると思われるのも嫌なので、そのまま何も気づいていない方向でいくことにした。
藤川も特に気にすることなく、腕をそのままに口を開く。
「ちなみに、佐々木海里の隣にいた子が相原優希奈だから」
「……え。あの子が?」
私は驚いて藤川の顔を見返す。
涼しげな横顔を見る限り、嘘はついていないようだ。
桜花のお姫様で、人質としての価値がある。
そんな子が、佐々木海里の彼女なんだ。



