「ひどい……。知ってて私を連れて来たんでしょ」
「別にお前を傷つけるためじゃねえよ」
優等生の皮を剥ぎ取り、藤川は私へ鋭い視線を送る。
「事実を自分の目で確かめれば、お前があきらめるかと思って。……彼女がいる男を想い続けるなんて、時間の無駄だろ?」
「それは、そうだけど」
だからって、わざわざ彼女と見つめ合っている光景を見せつけるために私を呼び出したなんて、ひどすぎる。
「七瀬があいつのことを気になっていたのは、前から知ってた」
「……え?」
革のブーツを履いた長い足を組み替え、藤川は続ける。
「七瀬は12月に椿高のイルミネーションを見に行ったんだよな。あのとき、俺もその場にいたんだ」
……やっぱり。
あの場所で藤川を見かけたのは、気のせいではなかったらしい。
「それで、七瀬が佐々木海里のことを見つめていることに気づいた」
「…………」
藤川に見られていたなんて。
恥ずかしくて、悔しすぎて返す言葉もない。
「七瀬は、本当に強い男が好きだよな」
遠く離れた夕陽を見つめ、藤川は吐息のように声を漏らす。
「あいつに惹かれるのは、当然かもな」



