去り際、名残惜しさがあった私は彼らの方を振り返り、ハッと息を呑んだ。
背の高い佐々木海里が、彼女を優しげな眼差しで見つめていた。
彼を見上げる女の子の純粋な瞳は潤み、煌めいている。
完全に彼らの世界が出来上がっていて。
二人は想い合っていると、誰が見てもわかるほどだった。
そして最後には、二人は手を繋いで私の視界から消えていった……。
*
桜花高校からの帰り道、私と藤川は誰もいない広めの公園に寄ることにした。
私は入口から遠いベンチへ、ドサリと落ちるように腰を下ろす。
「佐々木海里は、女がいたんだな。……残念だったな、七瀬」
隣に座った藤川は、どこか楽しそうにも見えるほど、淡く微笑んでいた。
ふと、その様子を見ていて気づく。
藤川は最初から知っていたんじゃないのか。
知っていて、私にそれを見せつけるために連れて来たんじゃないのか、って。
悔しくて目尻に涙が浮かぶ。
それを失恋の涙と誤解したのか、藤川はなぐさめるように私の髪をその大きな手で撫でてきた。



