藤川は機嫌さえよければニコニコ誰にでも愛想良く笑うけど、クールな雰囲気の佐々木海里は、愛想笑いすらしないタイプに思えた。

それとも、隣にいる彼女らしき人の前なら優しい笑顔を見せるのか……。



「この学校に、小野寺理希さんはいらっしゃいますか?」


佐々木海里と彼女の方へ交互に目を合わせ、藤川は優等生のフリをして尋ねる。

さっき、その人物とは会ったばかりだというのに、藤川はしれっと嘘をついていた。

私は黙ったまま成り行きを見守る。


大きな瞳が印象的な女の子は、不安げに佐々木海里のことを見上げていて。

そんな彼女を守るように、彼は一歩前へ出た。


「……さあ。その人が、どうかしましたか」


こちらの様子を窺いながら、佐々木海里がゆっくりと聞き返した。


二人とも真顔になると目つきが悪いから、睨み合っていると言ってもいいほど。


「いえ、友人が彼を探していただけなので。知らないなら結構です」


あっさり引き下がった藤川は、薄く微笑みを浮かべ一礼し、私の手を引いて桜花の門を後にした。