待ちくたびれた、と藤川は短く息を吐く。

彼が視線で示したのは、校舎を出てきたばかりの二人の男女の姿だった。


一人は佐々木海里。

彼の姿を視界におさめただけで、ドキリと胸が高鳴っていく。


もう一人は清楚な長い髪を風になびかせた、可憐で純粋そうな女の子だ。


二人の距離は、友人同士というにはあまりにも近く。
今にも手を繋いでしまいそうな、親密な関係を表していた。


せっかく会えて嬉しかったのに。

初々しい二人の様子を見ていたら、心臓が締めつけられて心が折れそうになる。



動揺を藤川に悟られないよう、私は必死で平静を装った。

彼にこれ以上弱みを握られたくない。こんな弱った姿を見られたくない。



「すみません――」


彼らが門のそばまで来たとき、藤川はさりげなく二人へ声をかける。

佐々木海里の鋭い視線が藤川へ刺さった。