まるでつられたように、ふと、遠い昔の記憶が蘇った。



『私、強い人の方が好きだなぁ。だって、強い方がちゃんと守ってくれるでしょ、私のこと』



小学生の頃とはいえ、ずいぶん自分勝手な酷い言葉だ。

それを投げつけた相手は――たぶん、セイちゃんか藤川。


私の腕に残る傷痕は、セイちゃんをかばったときのものだから。

彼に向けた言葉なのだと思う。


それにしても、酷すぎる台詞だ。

今度セイちゃんに謝らないといけない。

そう考えていたら、


「とにかく、あいつ……セイには近づかないこと」


いつもの調子を取り戻した藤川が、私の頭を軽く撫でてきた。


「もし『好きだ』とか言われても、簡単に信用するなよ?」


セイちゃんが私を好きだなんて、あり得ないのに。

不安そうな色を覗かせて、藤川は首を傾ける。


「……わかった」


ここは素直に了承しておいた方がいいと判断し、私は小さくうなずいた。

セイちゃんにいつ謝りに行こうかと、考えを巡らせながら。