「は……、隠す? 何を?」

「本当は私のこと……、騙したりしてない?」


無言になった藤川が起き上がったので、私もそれにならう。


目をそらし、しかも否定しないということは、騙している証拠?

急に不安になり、乱れた胸元をさりげなく整える。



「七瀬は。俺が『騙してない、隠し事は何もない』って言ったら信じてくれるの?」


目線を床に向けたまま、藤川が小声で問う。

その様子はどこか幼子のようだった。

いつもの強気な藤川とは違う。



「昔と違って、今は――七瀬を傷つけることはしていない。それだけは、信じて」


彼はようやく、私と視線を合わせた。


切なさを隠したその瞳は。

いつか、どこかで見たことがある。




『これからはずっと、七瀬のことを守るから。
……だから、嫌わないで。俺のこと』


『太陽が月に変わる、か。……そうなれたらいいんだけどな』




普段の自信家な彼はどこへ置いてきたのか。

寂しげな目をしていたときのことを思い出した。