間違っているという私の答えを消していく藤川。

その指が長くて、爪の形も腹が立つほど綺麗で。

見惚れていたら全然説明が耳に入ってこなかった。


「……わかった?」

「……うう、わかりません」

「……はぁ。ちゃんと聞いとけよ」


一つ溜め息をついてから、それでも藤川は意外と丁寧に説明し直してくれた。


そのあとも。

私のミスした箇所と似た感じの問題を、藤川がわざわざ作ってくれて。

苦手な問題を重点的に、何度も繰り返し解けばいいと教えてくれた。



「藤……、皇世(こうせい)の説明、すごくわかりやすかった。こんなに沢山、自力で問題を解けたの初めて」


わざわざ名前を言い直したのは、いつかの約束を思い出したから。


「ありがとう。勉強教えてくれて」

「お礼はキスでいいよ」

「……言うと思った」

「しようか、キス」

「しません」


間髪をいれず拒否すると、藤川は私の頬にかかった髪をよけ、耳にかけた。


「さっきは自分からキスしたくせに?」

「っ……だから、あれはセイちゃんのためで」

「セイちゃん、ね……」


意味ありげにつぶやいた藤川は、遠くを見つめる。