「……なんで、私も?」

「いや。桜花に興味があるのかと思って」


図星をつかれ、マグカップを持ったまま一瞬で固まる。


「例えば――佐々木海里は今、桜花で一番強いらしいよな」


佐々木、海里。

ドキドキと胸を高鳴らせながら、心の中でその名前を繰り返す。


「……藤川先輩、その人のこと詳しいの?」

「まあね。教えて欲しい?」


素直に2回うなずくと、藤川は優しげに目を細め私の前髪の辺りを撫でてきた。


「七瀬、可愛い」

「……!」

「正直な所とか、嘘をつくのが下手な所、可愛いと思う」


子ども扱いされたのに、鳥肌が立ってもおかしくない状況なのに、嫌な気持ちにはならなかった。
……どうしてなのか、自分でも不思議だ。


「じゃあさ、交換条件」

「え。何……?」

不安になって見上げると、藤川は口元を緩め囁いた。


「七瀬が俺を抱きしめてくれたら、佐々木海里のことを教えてやるよ」

「は?」


抱きしめる?

聞き間違いかと思い、首を傾げる私。