内心かなり焦りつつも、静かに階段を上がる彼の背についていく。
三つのドアを通り過ぎ、一番奥の白いドアが藤川の部屋だった。
白と淡いグレーの色調のインテリアを眺めていたら、奥にベッドがあることに気づき、途端に落ち着かない気分になる。
部屋の広さは私の部屋の倍ほどもあり、壁際に二人掛けのソファまであった。
藤川はそこへ腰を下ろし、私にも座るよう促した。
仕方なく藤川との距離を開け、革張りのソファに腰かける。
目の前のサイドテーブルからマグカップを取った藤川は、小さく笑って私に差し出してきた。
「何、急に大人しくなって。緊張でもしてる?」
「……別に、緊張なんてしてません」
楽しそうに顔を覗き込んでくる藤川から目をそらして、温かいカフェオレを口にする。
私の好みを知っているわけでもないのに甘過ぎないちょうど良い味で、少しは落ち着きを取り戻せた。
「そういえば。今度、桜花高校に用事があって」
突然、桜花という名称が藤川の口から溢れ、ビクリと反応してしまう。
「七瀬も一緒に来る?」



