【短】溶けた氷はただの水に変わるけど…

「なんで?…だめ?…じゃ、好き?」

「な、なん?!」

「言って?俺のこと、好き?」

ここで”嫌い”なんて言えるほど私は駆け引きが出来るような経験値はなくて…。


「す、き…」

「…ん?」

「…すき…」

「もっと」

「いやだってば、もう!」

「恥ずかしい?」

「そうです!」

「じゃあ、こうする」


ちゅ、ちゅ、ちゅ、とおでこからまぶた、鼻の頭へとムカつくくらい整った彼の口唇が降りてきて、頬を掠めてから、初めて時間を忘れるくらいの長いキスをされた。


「ばか…」

「うん」

「うん、て…何よ?」

「好きなんだよね。聖月かわいい」

「もう…好きにして…」

「え、いいの?」

「ばか!そういう意味じゃないってば!」


そこで初めて此処が人通りの多い場所だということに気付いて、私は彼にグーパンを軽くお見舞いしてから、無理やり離れた。