なんで?
どうして?

彼は何時だって、私の心を掻き乱す。


だって、私達…別に友達以外のなんのカテゴリーにも入らないんだよ?

それなのに…あんな不意打ち卑怯だよ。

…ずるい。


ジンジンと熱を持ってしまっただろう右手の小指を、ぎゅうっと抱き締めたまま廊下に出ると、其処には背の高い男子が立っていた。

顔も名前も知らないその人に、


「あの…?」


と恐る恐る声を掛ける。


「新島さん…つか、聖月。俺のこと分かんねぇの?」

「は…?」


初対面なのに、何だこいつは?とムッとして反論しようかと思うと、その人はにっかりと笑って言葉を続ける。


「壱、大塚壱(おおつかはじめ)」