「はぁー……とりあえず、ご馳走サマって感じ?」


部屋に入るなり、新條を心ゆくまで補給したオレ。イヤイヤしながらも、しっかりとオレの「お願い」を聞き入れてくれる可愛い新條を堪能して。
少しだけ気だるいんだけど、みんなと約束していた遊覧船乗り場へと向かう時間がきたから。
身支度を整えてあげても、まだ真っ赤な顔をしてオレにしがみ付いてる新條に声を掛けた。


「しんじょー…遊覧船、乗りに行く?…行けそう?」


きゅうっとオレのシャツを掴んでる手を、そっと撫でてあげると、掠れた声で、囁かれた。


「このまんま二人きり、…がいいけど……船、乗りたい……」


可愛い仔猫ちゃんは、どうも旅行先では素直になっちゃうみたい。
その、我がままだけれど、すごーく可愛い返事に気を良くして。
オレは、分かった、と呟くと新條の手を取ったまま立ち上がった。


「あー桂木に怒られるかも?」


腕時計は、予定時刻より15分くらい先を回ってて。
ロビーで仁王立ちになってるであろう、時間に煩い桂木の姿を想像して、二人で笑った。