「あ。あやちゃん…雨降ってきた!」


遊覧船に乗ってる途中でパラパラと雨が降り出してきて。
周囲を見渡したら結構な人数が乗っていたから…。
船室には戻らずに甲板上部へと上がる階段の下に入ってから濡れないように新條を抱き締めた。
その行動に、新條が怒るかなぁって思ったんだけど。

…なんせ大勢の人の中でそんなコトしてるわけだし…。

逆に嬉しそうに微笑んで抱き締めた腕に自分の腕を絡めてくる新條。


「しんじょー…可愛い…」


なんだかもう、我慢してるのもバカみたいに思えてきて耳元でそう囁いた。
ピクンと震える新條にもっと身体を密着させるとオレの腕の中にすっぽり収まって顔を赤くしてる。


「…ッ…ばか。こんなトコで盛んないでよ…」


なんて恥ずかしさで猫目に薄っすら涙を滲ませてる新條は、見事にオレを秒殺。
だって、言葉では「離れろ」って言う癖に、今日の朱莉サンは怒鳴るわけでもなく。
それどころか、逆に自分からスリスリッてくっついてきてくれちゃったりするんだもん。