昼食を終えたあとの、午後の勤務の時間は、あっと言う間に過ぎて行った。


そして、全てが終了すると、周りのパートさん達が


「桜井さん、お疲れ様。」


と一斉に拍手を贈ってくれた。まさしくサプライズ、私は懸命に涙をこらえながら


「ありがとうございます。みなさんのお蔭で、有意義で、楽しい半年間を過ごすことが出来ました。心から感謝いたします。みなさんもお身体に気をつけて、明日からまた、頑張って下さい。」


と言って、一礼した。パートさん一人一人に挨拶し、名残を惜しんだ私は、最後に所長に挨拶に出向いた。


着任時に、やや皮肉めいたことを言ったこの人が


「君の仕事に対する、誠実な姿勢に感服しました。本省に戻っても、それを忘れないようにしなさい。」


と言ってくれたのは嬉しかった。


こうして、半年しか居なかったと思えないくらいの愛着の湧いた職場をあとにして、私は歩き出した。


すると


「桜井さん。」


と私に、呼び掛ける声が。


「川越さん。」


その声が、誰のものか、すぐに、わかった私は、そう呼んで振り返った。夕日を背にした川越さんは、私にゆっくりと近づいて来た。


「半年間、お疲れ様。」


「ありがとうございます。川越さんには、いろいろ教えていただいて、感謝しています。」


「少しは君の役にたったのかな?それならよかった。」


そう言って、私を見る川越さん。そんな川越さんに違和感を感じていた私は、ハッとその理由に気が付いた。


「川越さん、やっと敬語じゃなくなった。」


「もう遠慮することないからね。これが・・・最後だから。」


そう言うと、川越さんはフッと寂しそうな表情を浮かべた。