世界がグラリと揺れていた。


それと同時に目の前の輝久が慌てた表情であたしに手を伸ばす。


あ、そういえば後ろは階段だった……。


そう気が付いた瞬間、あたしは輝久に腕を掴まれて引き寄せられていた。


寸前の所で落ちずに済んだようだ。


ホッとしたのもつかの間。


あたしを助けた反動で輝久の体が階段の空中へと投げ出されたのだ。


「輝久!?」


名前を呼ぶのが精いっぱいだった。


あたしは腕を引かれた衝撃で廊下に倒れ込んでいた。


落ちて行く輝久。


それはすべてスローモーションのようだったけれど、助ける時間なんてなくて……。


輝久はそのまま階段に何度も体中をぶつけて落下していく。