「そっか。昨日はあの辺で事故があったって聞いたけど」


「うん。トラックとバイクの事故だったみたい」


その場にいたとは、なんとなく言えなかった。


無駄に心配させるのも気がひける。


「なんかさ、その事故が変だったって、友達から聞いた」


「変だった?」


あたしは首を傾げて透を見た。


「うん。友達はその事故現場にいたんだけど、バイクの運転手は破損したバイクの部品がお腹に突き刺さってたんだって。それなのに、どこにも血が流れてなかったって」


その言葉にドキッとしてしまう。


あの事故の血はソレがすべて飲み干してしまったからだ。


「へぇ? 友達の勘違いじゃないの?」


あたしはぎこちなくならないよう、気を付けながらそう言った。


「そうなのかな? 俺らの間じゃ吸血鬼事件として有名になったけど」


まさしく、そのネーミングの通りだった。


「吸血鬼なんているわけないじゃん」


あたしはそう言い、笑ったのだった。