鏡を見ていないからわからないけれど、あたしの顔色もまだ悪いままだろう。


この人にも多少の優しさがあったのだと驚いた。


このまま部屋に戻ってもいいのかどうか迷い、とりあえず食器の準備をすることにした。


なにもせずにいてまた怒鳴られてもたまらない。


手際よく準備をしていると、「痛っ」という声が聞こえてきて、叔母が手を止めた。


「ど、どうしたんですか?」


駆け寄って見て見ると、指先から血が出ている。


普段料理なんてしないからだ。


心の中でそう思いつつ、慌ててタオルを手渡した。


随分と深く切ってしまったようで、白いタオルはどんどん赤く染まって行く。


「なにしてんだ! お前が料理しないからだ!」


リビングのソファでふんぞり返っていた叔父が、騒ぎを聞きつけて怒鳴って来た。


「ご、ごめんなさい」


そう言い、料理の続きをし始める。