ひなりを背負って歩く閨川は、廊下ですれ違う生徒たちの注目の的になった。

「キャー!玲眞先生が女の子おんぶしてる!」

「いいなぁー誰あの子〜羨ましい〜」

ひなりは他の女子たちに少し申し訳なく思ったが、同時に、閨川を独り占めしているようで、凄く嬉しかった。

先生…綺麗な髪…いい匂い…

ひなりはまた、幼稚園の頃を思い出した。
そして、何とかして閨川にあの時の話をしたいと思った。

「あの…先生…」

「ん?どうした?」

私は先生が職業体験で来てくれた幼稚園の元園児です…

その一文が喉につっかえて言葉にできないひなり。

「い…いえ…何でもないです…」

ひなりのもどかしい気持ちなど知る由もなく、閨川は保健室の戸を開けた。