常務は腹の底にずしりと響く低音で言い、チッと舌打ち苛立ちを(あらわ)にする。

戸締まりをしながら、常務の顔を確認すると、眉間に皺が寄っていた。

店を施錠し、辺りを見回すと、警察官が一般人を装い張り込んでいる。

俺たちを一瞥し踵を返す。

常務がこれ見よがしに舌打ちすると、スーツ姿の警察官が近づいてきた。

「悪いな。上の命令なんでね」

ポツリ、苦々しく言った。

「ご苦労様です」

俺は言い、店の冷蔵庫から失敬してきた缶コーヒーを3本、手渡した。

「ビールをとも思ったんですが……」

悪気なく微笑んでみせると、「どうも」と素っ気ない返事をした。

ふと見上げると、白み始めた空に淡い色の月が浮かんでいる。

この後、組に戻り仮眠を取る。

3時間、休めるだろうか。

俺が考えていると常務が煙草を加え、サッと煙草の箱を差し出した。

いつも吸っている銘柄ではないが、1本頂いた。