任侠と言えば、刺青を連想させる。

龍、虎、蛇、弁財天、毘沙門天、なにがしかの観音など、絵柄は様々で個性的なものが多い。

背中全面あるいは、肩から腕にかけて、両肩、太もも……場所も様々だ。

水墨画のようにシックなものから、色鮮やかな派手なものまである。

俺が初めて見た刺青は、麒麟だった。

背中全面に、白と黒で描いた麒麟。

まるで今にも飛び出してきそうなほど、鬼気迫る迫力だった。

いつ、何処で見たのかは覚えていない。

刺青の主が誰だったのかも知らない。

だが、あの刺青は今でも鮮明に、俺の記憶に焼きついている。

俺が子供の頃はまだ、銭湯で刺青を入れた人を見かけたが、丸暴お断りの銭湯が増え、ほとんど見かけなくなった。

刺青は描くキャンバスが違えど、れっきとした芸術ではないかと、俺は思う。