「今お帰りですか?」って聞こうとした時、明かりにはっきりと照らされて気付いてしまった。


この人、傷だらけだ……!


Tシャツにデニム、仕事帰りにしてはあまりにラフな格好。

そこから伸びるがっちりと筋肉のついた腕には、無数の傷がある。


よく見たらほっぺに絆創膏貼ってるし……大の大人が、なんで!?



「そ、それじゃ! 失礼します!」


「ん? あぁ」



お隣さんの顔を見ることなくぺこりと頭を下げて、私はすぐにその場から立ち去ることを決めた。


慌てて自転車に跨って、全速力で漕ぎ出す。



やだ、嘘でしょ。普通に生活してたら、あんな生傷できない。


懐かしい匂いなんか真逆! 危険な香りしかしないじゃん!



これはもう、もしかしなくても……お隣さんは危ない人だ……!