「相澤くん、どういうこと?」


そう言って初めて見た彼の顔は、至極綺麗な笑みを浮かべていた。


満足そうな。


「何も無かったことになんてさせない」


それは、昨日のことを言っているのか。


「いつもと変わらない笑顔振りまきやがって」


気づけば相澤くんは、機嫌が悪そうな顔になっていた。


「だからって、どうして私を」


視線がぶつかる。


またあの目。あの目が私に突き刺さる。


この目を前にすると動けなくなる。美月を演じることが出来ない。


「この髪も」


相澤くんの手が髪に触れ、


「目も」


瞼に、


「頬も」


頬に手を添え、


「唇も」


親指で唇をなぞった。


「全部欲しい。それだけだ」


相澤くんの顔が近付いてくる。


そして、キスをされた。


だからダメなんだ、あの目は。


私をも熱くする。錯覚しそうになる。