私を純粋に愛してくれている人。



櫻木美月から解放してくれる人。



その人は、そっと目を閉じて顔を近づける。



頭の奥で加賀くんの声が響くのに気付かないフリをして、口付けを交わした。



「洸、好き」



洸は心底嬉しそうに笑って、もう一度顔を近づける。



彼しかいらないのに、唯一欲した人なのに。



どうしてこの世は不条理なのか。



それとも彼を愛してしまった、罰…?



「ねえ美月、俺から離れないで」



洸に呼ばれる私の名前と、加賀くんに呼ばれる私の名前と。



こんなにも感じる心地が違うのは何故だろう。