◇◇
「ごめん待たせた」
高校生らによって賑やかな店内。
笑い声が聞こえる店内には似つかわしくない私たちの雰囲気。
何日かぶりに見る彼の顔は、花那と同様少しやつれて見えた。
「どうして私に電話してきたの?」
ずっと下を向いていた彼の顔がやっとこちらを向く。
キスのことは最早、争点ではない。
あれは多分一時の気の迷いだ。
問題はあの後私に連絡をしてきたこと。
あんなキスなんて無かったことにして、お互い元の生活に戻れば良かったのに。
「…気が付いたら、かけてたんだ。あんたの声が聞きたくて、もう一回話したくて」
私の目を真っ直ぐ見て、苦しそうに言う。



