「最近秀人くん、様子がおかしいの」


花那が、眉を下げてポツリと呟く。


その口から秀人くんというワードが出るたびに、私の心臓は身体中にその振動を伝え、体温が下がった感覚に陥る。


良かった。花那はまだ何も知らないようだ。


私が加賀くんとの間にあったことを隠すのは、善か悪か分からない。


花那がこの事実を知らないのに、結局苦しんでいるのなら、隠している意味が無いのではないか。


「大丈夫。きっと何でもないよ」


それでも事実を伝えられないのは、己の為。


私が花那に嫌われたくないから。


軽蔑されたくないから。


ひたすらに隠して、騙して、自分の為に笑う私は正に偽善者だ。