見つめ合っていた視線はその音によって離れ、今度は二人とも扉を開けた人物を見ていた。


「あれー、何。二人って知り合いだったわけ?」


そこにいたのは氷室くん。


ズカズカと私たちのところまで歩み寄る。


相澤くんはそれにならって立ち上がった。


「氷室、お前なんでここに」


そうだった。二人は知り合いなんだった。


時計を見ると、3時間目はとっくに始まっている時間。


「あー、ちょっとサボろうと思って」


氷室くんは私をちらっと見てそう言った。


いつもの私なら注意するところなんだけど、私も授業に出ずにいた身だ。


氷室くん一人だけを注意することなんて出来なかった。


「邪魔なら、出てくけど」


氷室くんのそれを聞いて今度は私が立ち上がった。


相澤くんの手当のおかげで痛みは歩けない程じゃない。


「私が出て行くから。相澤くん、助かったよ。ありがとう」


氷室くんと相澤くんと三人でいるなら、私が邪魔だと思うし。


それに、相澤くんとこれ以上同じ空間にいるのが不安だった。


あんな、視線一つで私の心をあれほど揺さぶる存在が恐怖でしかなかった。


私は私のままでいたい。


「いや、櫻木はもう少し休んでろよ。一応病院も行った方がいい」