そして、次の日…クラスで彼女を見付けて声を掛けようとしたけれど、他の女子に声を掛けられて、タイミングが合わずにその場を逃してしまった。


「まいったな…」


俺は、そっと呟いて、ガシガシと頭を掻いた。

その後の何度か声を掛けようと試みるも、その度に邪魔が入り、全て空回りで終わる。
いつもなら俺に向けてくれる笑顔もそこにはなくて…視線も合わせてくれない。
そんな状態でその日が終わりそうになって、俺は急いでHRの終了と共にまるで避けるようにして教室を出ていこうとする彼女の後ろ姿を追おうとするけれど、途中で何度も足止めを食らってしまう。


「飯田くん!チョコ、もらってください!」

「薫くん、付き合って!」


それらの言葉をやんわりと断りながら、俺は視線の先で彼女の姿を追い続ける。


「ごめん、その気持ちには応えられない」


その一言に、チラリと彼女が此方を向いた気がしたから、俺は思わず周りのことも考えずに、


「…っ!京香っ!」


と、自分でも驚くくらい大きな声で彼女の名前を呼んだ。


けれど、それでも彼女は俺の方には振り向いてくれなかった。