“ 2年2組 ”

扉を開ける前に、教室前にかけられたプレートをちらりと確認する。




少し前に学年が上がったばかりで、まだ新しい教室の場所には慣れない。

うっかりしていると、1年生のときの教室に入ってしまう……なんてことも既に数回経験済みなんだから。



間違いなく自分の教室だ、と確信をもってから扉に手をかけた。





ガラガラッ、と思っていたより派手な音。

その音に反応してこちらを振り向いた “彼” と目が合う。





久住(くずみ)さん?」





薄い唇が開いて紡がれた私の苗字

揺れるカーテンの向こうから漏れたひかりが、彼の黒髪をきらめかせて



まるで一枚の絵を見ているかのような。




はっと息を飲んだと同時に、もう一度彼───佐和(さわ)くんが口を開いた。




「もう戻ってこないと思ってた」




くす、と微笑した彼の立っている場所は黒板のすぐ前。きっと黒板を消してくれていたんだと思うけど、それがちょうど。



舞い上がったチョークの粉がダイヤモンドダストみたいに彼のまわりを彩っていた。




さすがはイケメン、何をしても絵になるんだなあ、なんて呑気な考えが浮かぶ。