3度目に、君を好きになったとき




放課後の美術室は、いつもより人口密度が高かった。


奥の窓際の席にいた柏木先輩と真っ先に目が合い、胸が微かに音を立てる。


ただ視線が重なった、それだけなのに。

やっぱり私は、先輩のことが好きなんだと自覚する。


その証拠に、タブレットを操作していた千尋先輩と目が合っても、体に何も変化は起こらなかったのだから。


一応、美術部員の一人である千尋先輩は、タブレットの画面上で絵を描くことが多い。

アナログが好きで水彩画を描く柏木先輩とは真逆。

他には油絵を好む人もいれば、イラストを黙々と描いている人もいて、わりと自由な部だと思う。



「……あのあと、大丈夫だった?」


不意に私の机に影が差した。顔を上げれば、柏木先輩がすぐそばに立ち、控えめにこちらを見下ろしていた。


「あ……、はい。大丈夫でした。あのときは、ありがとうございました」


生徒会長に話しかけられた際、柏木先輩に助けてもらったお礼を言う。

本当はそのあと沢本君とのトラブルがあったけれど、言い出しづらくて作り笑いをする。

こんな私を気づかってくれる先輩に、さらに心配をかけるわけにはいかなかった。