「そ、そんなことないです、蓮先輩の方が……!」


ムキになって言いかけて、慌てて口を閉じる。
うっかり本音が漏れてしまった。


「……え」


私の言葉に戸惑いながらも、先輩は軽く目を見開いてこちらを見る。


蓮先輩の場合は格好いいというより、まず先に“綺麗”という形容詞が来るから。

そもそも真鳥と同じくくりではない。一緒にされたら困る。


「お世辞だとしても、結衣からそんな風に言われるの、嬉しいかも」


優しく目を細めた先輩は「ありがとう」と付け足した。


「結衣って。よく真鳥君のことを見ている気がしたから。気になる存在なのかなって思ってた」

「……私が、真鳥を?」


聞き間違いかと思って首をかしげたとき。
強めの風が吹き、私の髪が舞い上がる。

蓮先輩が一歩踏み出し、乱れた髪をそっと直してくれた。


偶然、頬に指が触れてドキッとする。


「勝手なことだとは思うけど。いまだに僕は……、」


偶然と呼ぶには長く、頬に置かれたままの温かな指。