私は手に持ったヘッドフォンの耳当ての部分を指でなぞる。


「ねぇ…松下くん」


私なんか、好きになっちゃダメなんだよ。

いつまでたっても過去に縋り付いて、離れられなくて。

忘れようとして、忘れられなくて。

思い出にしようとして、失敗して。


「お願いが…」

「…なぁ、栞帆」


お願いがあるの、そう言おうとした時、松下くんは私の言葉を遮った。


「利用しろよ、俺のこと」

「え…」

「栞帆がいつまでたっても、あいつのこと忘れられなくて、それでも忘れたいっていうなら、俺のこと利用して?」