栞帆はポロポロと涙を流しながら、自分の頬にあてがわれた男の手を握って、そのまま手を離した。

男は、悲しそうに笑って、栞帆の涙を親指で拭う。


「自分に言い聞かせるなら、もっと優しい言葉にしてあげなよ。

泣くなら、その男に慰めてもらえよ?

俺はまだ、無理だから」

「…わか、ってる。ばか、そんな、の…期待してない」

「あぁ、知ってる」

「…和久」

「うん」

「好き、だよ」

「あぁ、俺もだよ」

「忘れてくれる?」

「栞帆こそ」

「…わかってるもん」