「靴屋から事情を聞いて、セシリア様がなにをなさりたかったのかがわかりました。息子さんに靴作りへの情熱を取り戻させるために、わざと困らせていたとは感服です。それにしても、靴屋の悩みを、どのようにしてお調べになったのですか?」


ギクリとしたセシリアは、目を泳がせて嘘をついてしまう


「それは、ええと……コルドニエの主人が、以前、そのようなことを話していた覚えがあったので……」


たとえクロードに嫌われたとしても、悪役令嬢計画を成功させたいと思っていたはずなのに、愛しい彼を目の前にすれば、自分をよく見せようとしてしまう。

純粋な恋心ゆえに、クロードの勘違いに話を合わせてしまったセシリアであったが、同時に後ろめたい思いが広がった。


(本当は意地悪しようとしていただけなのよ。クロードさんに褒められる資格はないわ……)


彼のまっすぐな視線から逃げるように、セシリアは俯いた。

するとクロードの右手が伸ばされ、男らしい指で顎をすくわれる。

目を丸くして驚くセシリアに、クロードはフッと柔らかく笑った。


「泣いているのかと思ったものですから……。私の勘違いですね。失礼しました」


すぐに顎先から指は外されたが、セシリアの動悸は治まらず、ますます激しく鳴り立てる。