自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

「いいえ、もういいの!」

「と、申しますと……?」


どうやら難癖つければつけるほど、靴屋を喜ばせてしまうようだ。

これ以上、意地悪しても意味はない。

それを理解したセシリアは、紙箱から青いパンプスを取り出して胸に抱くと、恥ずかしそうに頬を染めて親子に言う。


「あの、この靴、とても素敵です。サロンパーティーに履いていくわ。何度も作り直しをさせて、ごめんなさいね……」


達成感を味わっているような清々しい顔をしたコルドニエの親子は、「ありがとうございました!」と王女に向けて深々と頭を下げると、応接室を出ていった。

三人きりになると、セシリアたちは揃ってため息をつく。


「悪役令嬢計画は失敗です。靴屋にあのような裏事情があったとは予想外でした」


眉を寄せてそう言ったのはカメリーだ。

肩を落としたツルリーは、心配そうにセシリアを見ると、「また人助けしちゃいましたね」と声をかける。

それに力なく頷いたセシリアは、椅子にぐったりと体を預けてうなだれた。