自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

「まぁ! かーー」

思わず『可愛い』と喜びそうになったセシリアであるが、左隣に立つカメリーが咳払いをして注意を与えてくれたため、ハッとして冷たい表情に戻した。


「まぁまぁね。でも、このデザインでは満足できないわ。やり直しよ」


スケッチブックをテーブルにポンと投げ置いて、足を組み替えたセシリアは、フンと鼻を鳴らす。

それも悪役令嬢マニュアルに書かれた対応の仕方で、双子の侍女も同調して頷いている。

硬い顔を崩すまいと努力しているツルリーが「つまらないわ」と感想を述べ、「ありきたりなデザインですね」と真顔のカメリーが文句をつけた。


「やり直しですか……承知しました」


スケッチブックを回収した靴屋は、困惑した顔をしている。

いつもの王女なら、絶対に喜んでくれるデザインだと思っていたからだろう。


「それでは、ご希望を承ってもよろしいでしょうか? 色や形、装飾はどのようにしたらよいのでしょう?」