自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

「ふたりとも、魔術はやらなくていいわ! わたくしは大丈夫。もう一度、自分の力で、運命に抗うことに決めたのよ」

「と、いいますと……?」


声を揃えた双子が、よく似た瞳を瞬かせてセシリアを見る。

ニッコリと微笑んだセシリアは、澄んだ碧眼に強い決意をあらわにし、靴屋をターゲットに悪事を働くことを打ち明けた。


「ナイスアイディアです! 早速、細かな計画を立てましょう!」

ピョンと飛び跳ねたツルリーが、真っ先に賛成してくれた。

いつもながらに、誰よりもやる気満々である。


一方、真顔のカメリーは、セシリアに向けて右手を差し出し……「リスクを伴いますので、金貨一枚になります」と代金を要求する。

リスクとは、万が一、悪事に協力したことが国王にバレて、侍女をクビにされる恐れがあるということだろう。

現金な侍女に苦笑いしつつ、キャビネットから金貨を取り出して手渡せば、カメリーも笑顔になった。


「ふたりとも、私と一緒に頑張って意地悪してね」

「お代の分はキッチリと」

「三人で立派な悪女を目指しましょう! 楽しくなってきましたー!」


セシリアたちは、「エイエイオー!」と拳を天井に突き上げる。

おかしな団結力を高める、うら若き三人の貴族令嬢を、肖像画の王太子と籠の中のアヒルが無言で見つめていた。