自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

セシリアの笑顔は引きつっている。

自分のためにやってくれたことだと理解しても、呪いをかけてくれてありがとうとは言えない。

どうしたものかと困惑し、籠の中のアヒルに視線を向ければ、なにかを勘違いした様子のカメリーが、「そうなんです。効果が表れません」と話しだした。


「この書物によれば、アヒルが煙のように消え、代わりに遠い地にいる王太子がアヒルに変身するはずでした。しかしアヒルは消えません。やはり、本物ではなく、肖像画を代用したのが失敗の原因でしょうか?」


もとより、魔術の類はインチキなことが多い。

その怪しげな本を信じている様子のカメリーに、それを教えてあげるべきかとセシリアは迷っていた。

しかし先に口を開いたのは、名案を閃いたとばかりに指先を弾いたツルリーである。


「それなら本物を、ここに召喚する術を先に使えばいいんじゃない?」

「ツルリーにしてはいい考えね。そうしましょう。召喚術は、確かこの辺りに……」


珍しく意見の合う双子が、顔を突き合わせてページをめくり始めたので、セシリアは慌てて止めた。