(私だって、お母様の娘ですもの。頑張ればきっと、強くなれるはずだわ……)


母に勇気づけられた思いで、セシリアの中には、やる気が満ちてくる。

そのやる気とは、もう一度、誰かに悪事を働いてみようというものであった。

見守り役のクロードに嫌われてしまうという懸念はあるが、それさえも覚悟の上で行動しないと、なにも変えられない。

愛しい彼に二度と会えない遠い地へ、嫁がされてしまうのだ。

迷っている場合ではなかったと、セシリアは奮起した。


無事に前向きな気持ちを取り戻した彼女は、そこからは母や弟と、いつもの他愛ない家族の会話を交わしつつ料理を食べ進める。

そして今、デザートの、イチジクのタルトが出されたところである。

正しいテーブルマナーでそれを味わいながら、セシリアは新たな話題を持ち出した。


「来月、ドラノワ家でサロンパーティーがありますの」


ドラノワ公爵家と王家は親交が厚く、そこの令嬢であるイザベルとセシリアは同じ歳で、幼少の頃から親しい付き合いをしてきた。

親友といっても差し支えないだろう。

同年代で気の合う若い貴族令嬢が、二十人ほど集まってのサロンパーティーは、定期的に催されている。

セシリアが王城に、彼女たちを招待することもあるが、今回はドラノワ家で開かれる予定で、主催者はイザベルであった。