ツルリーはこうして、クロードの居場所を確認しては、セシリアに報告してくれる。

そのため侍女としての務めがおろそかになってしまい、真面目なカメリーといつも喧嘩になるのだ。

ツルリーがセシリアを引っ張ってドアに向かおうとしたら、案の定というべきか、険しい顔をしたカメリーが立ち塞がった。


「セシリア様を連れて行かせないわ。あと二十六分でお茶の時間が始まるのよ」

「あら、今日は、お客様がいるわけじゃないんですもの。少しくらい遅れたっていいじゃない」

「駄目よ。お茶の時間を遅らせれば、お腹が空いていない状態で晩餐になってしまうわ」


カメリーにピシャリと正論をぶつけられて、ツルリーは口を尖らせる。

今日の口論の勝者はカメリーで決まりかと思われたが、「あなたは自由すぎる。真面目にお勤めして」とカメリーが文句を付け足したことで、またツルリーが反論した。


「私はいつだって真面目よ。真剣に全力で、セシリア様の恋を応援しているわ。イケメン騎士たちを鑑賞できるから、私も楽しいし!」

「どうしても覗き見したいなら、ひとりで行って。セシリア様はカナール王国に嫁がねばならないのに、失恋の傷を深くしてどうするのよ。侍女ならば、早く騎士団長を忘れられるよう、配慮してあげるべきじゃない。まったくツルリーは、能天気な馬鹿だわ」

「なんですって!? 若い私たちが恋に浮かれて、なにが悪いって言うのよ! 亀の甲羅みたいに頭がカッチカチの、堅物カメリー。そんなんじゃ、行かず後家になっちゃうわよ」