ハッとして「ごめんなさい!」と謝ったセシリアは、恥ずかしさに頬を赤らめ、慌てて言い訳をする。


「カツラが、頭から離れなくて……」


するとカメリーに、またしても不可解そうな目を向けられた。

その視線は、セシリアの頭頂部に移る。

王女の長い髪はサイドを綺麗に結い上げ、サファイアを花形にあしらった豪華な髪飾りで留められていた。


「今朝、セシリア様の髪を整えたのは私です。カツラを被せておりませんし、セシリア様には不要のものです」

「あの、そうじゃなくってね……」


ふたりが噛み合わない会話をしていたら、今度はノックもなくドアが開けられ、頭に赤いリボンを飾り、白地に黒いラインで縁取られたワンピース姿の若い娘が駆け込んできた。

もうひとりの侍女、ツルリーである。


「セシリア様ー!」


邪魔だとばかりに、カメリーにドンと体当たりを食らわせたツルリーは、驚いているセシリアの腕を取って長椅子から立たせると、興奮気味にまくし立てる。


「任務で外出されていたクロード騎士団長が、先ほど戻られました! 今は馬場で若い騎士たちに稽古をつけていらっしゃいます。覗きに行きましょう!」