自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

「なにを馬鹿なことを。国軍の何千という刃がお前に向くぞ。門を出た途端に、お前の命は尽きるだろう」

「死にません。必ず幸せにすると、セシリアに約束しました。逃げ切ってみせます」


睨み合う国王とクロード。

窓の外を飛んでいた白鳩が、危険を感じたのか急に方向転換して逃げていった。


セシリアは、口を挟むことを父に禁じられたため、ハラハラしてふたりの会話を聞いていた。

けれども、クロードの命を取るようなことを言われては、黙っていられなくなる。

悲しみや怒りが沸いて瞳を潤ませた彼女は、国王に駆け寄ると、その胸に拳を叩きつけた。

愛しい彼を助けたいという一心で、生まれて初めて、偉大なる父に反抗している。


「お父様のわからず屋! どうして許してくださらないのですか! クロードさんを殺めると言うのなら、わたくしも後を追います。ひとりで生きてはいけないほどに、愛しているのです!」


これまでのセシリアは、親に対していつでも大人しく、従順な態度であった。

そんな娘がまさか、声を荒げて怒りをぶつけてくるとは思わなかったのであろう。

面食らった顔をして娘の拳を受け止めている国王であったが、突然吹き出すと、我慢できないと言いたげに執務室に笑い声を響かせる。

これにはセシリアが驚かされ、父の胸を叩いていた手を止めた。

クロードも後ろで、戸惑いの声を漏らしている。


「国王陛下……?」