自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

頷いたクロードの瞳が、艶めいていた。

セシリアの胸は高鳴り、頬だけではなく、もっと触れてほしくなる。

けれども誰が通りかかるかわからないこの場所では、抱擁も口づけも交わすことはできない。

名残惜しいと思いつつも、セシリアは両開きの扉の取っ手に手をかけた。

それを引く前に、誰かが内側から開けたから、セシリアは「キャッ!」と声をあげて後ろに倒れそうになる。

すかさずクロードが彼女の背中を抱きとめ、「大丈夫か?」と声をかけたが、その直後に彼は目を見開いて息をのんだ。


「国王陛下……」


東の通用口から現れた父親の姿に、セシリアもビクリと肩を震わせ、驚いていた。

朝の支度を済ませ、いつも通りの整った装いをしているということは、とっくに起床していたということだろう。

いつもとタイムスケジュールが違うのは、どういうわけなのか。


(もしかして政務が忙しく、執務室で早朝から仕事をされていたのかしら? お父様の執務室からは西門が見えるわ。まさか……)


馬に乗って帰城した姿を見られていたのでは……とふたりが不安に瞳を揺らしたら、硬い表情の国王が口を開いた。


「クロード、なにを驚いている。昨夜は大捕り物であったそうじゃないか。クリミネル一家の頭を捕らえた功労者はお前だと聞いたぞ。もっと胸を張ったらどうだ」