自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

クロードが、北側に建つ使用人宿舎の方を見て呟いた。

メイドや従僕、調理人などがぞろぞろと、北の通用口に向けて歩いているのが見える。

クロードの声に不安が滲んでいるのを察したセシリアは、「大丈夫です」と声を潜めて話しかけた。


「使用人たちが働き始めても、お父様はまだ寝ていらっしゃると思います。いつも通りなら、一時間後くらいに起きるはずです」


今は、何事もなかったふりをして、普段通りの生活に戻るしかない。

今回の駆け落ち未遂が国王に気づかれなければ、きっと次のチャンスは訪れると、ふたりは信じていた。


東の通用口の扉の前は、無人である。

その前に立ち、ふたりは見つめ合った。

セシリアは自室に戻り、クロードは事件の事後処理のために軍の詰所に向かわねばならず、ここでしばしの別れだ。

離れがたいと思うセシリアの頬にそっと手を添えたクロードは、美麗な瞳を細め、力強い約束を与えてくれた。


「計画を立て直したら、セシリアに知らせる。信じて待っていてくれ。必ずや君を手に入れる」

「はい。わたくしはクロードさんを信じております。焦らずに待っていますから、どうか無理だけはなさらないでくださいませ……」