自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

周囲は二階建ての民家が建ち並ぶ、住宅街である。

まだ夜が明けたばかりであるため、人通りはなく、静かな石畳の道には、ふたりを乗せた馬の蹄の音しか聞こえない……と思ったら、左前方の民家の門前がやけに騒がしい。

そこまでいって馬を止め、何事かとふたりが馬上から門の内側を覗き見れば、寝間着姿の中年の男女が外に出ており、若い娘を左右から抱きしめて大声で泣いている。


「よく帰ってきてくれた! お前がいなくなって、父さんはどんなに心配したことか」

「母さんもよ。生きた心地がしなかったわ。ああ、神様、娘を返してくださってありがとうございます!」


「あれは、もしかして……」とセシリアが問いかけたら、クロードが頷いた。

どうやら誘拐された娘のひとりの自宅が、ここのようだ。

クロードの部下の騎士に付き添われて、家に帰ってきたところに、ちょうど出くわしたらしい。

抱き合って喜ぶ親子の後ろには、若い騎士がひとり立っていて、馬上のクロードに気づくと、すぐさま敬礼の姿勢を取った。