自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

五年前も港で、三十人ほどの悪党とひとりで剣を交え、セシリアを守りきった彼であるが、岩場や揺れる船上でよく戦えるものだ。

あの時よりも、さらに強くなったのではないかと、セシリアは改めて彼に頼もしさを感じつつ、胸を高鳴らせた。


(心配いらなかったかしら。この分なら、すぐに悪党退治が終わりそうだわ……)


しかし、安心するには早かったようだ。

船室の扉が勢いよく開けられたと思ったら、潜んでいた男たちが雄叫びをあげて、続々と甲板に飛び出してきた。

その数、十五人ほどだろうか。

「なんだよ、たったひとりの騎士じゃねぇか。野郎ども、さっさと片付けろ!」という大声が崖の真下から聞こえ、岩場の方からも悪党どもが押し寄せてきた。

その数は十人……いや、二十、三十とどんどん増えていく。


揺れる船体にかけられたランプと、悪党たちの腰に下げられたランプが、チラチラとクロードの顔を暗闇に浮かび上がらせる。

その麗しき顔に焦りが浮かんだ気がして、セシリアの胸には強い恐怖が湧き上がった。


(いくらクロードさんが強くても、こんなに大勢と戦うのは無理よ。早く応援を呼ばなければ……!)